コロナワクチンの遅れは誰のせい?

2021/06/09

 欧米に遅れること約3か月、やっと高齢者の新型コロナワクチンの接種が始まったが、こんなに遅れたのは厚生労働省のせいだとか、自治体の準備が遅いだの批判が多く出ている。そもそもは、ファイザー社のワクチンを国が特例で承認したのが2月14日。これが遅れた一番の原因だ。ではさっさと承認すれば良かったのか?いや、特例で承認できたこと自体が異例と言える。何故なら日本におけるワクチン接種の歴史は、健康被害に対する相次ぐ国の敗訴に象徴される負の歴史だからだ。1989年のMMRワクチン導入後の無菌性髄膜炎発生は被害者による集団訴訟となり国は敗訴、1993年にMMRワクチンは中止となり現在も先進国中では唯一MMRワクチンが実施されていない。1994年には予防接種法が改正され義務接種は努力接種に、集団接種は無くなり現在のような個別接種が中心となっている。
 その後も2005年に日本脳炎ワクチン後のADEM発症の報告により積極的勧奨は中断され2011年にやっと再開。子宮頸がんワクチンは接種後の有害事象の報告から現在でも積極的勧奨は中断されたままで、接種率は先進国中では最低だ。メディアは因果関係が証明されない中、このワクチンをことさら危険視する報道を続け、被害者を原告とした裁判は今も継続中である。このようなワクチンを巡る負の歴史から厚労省がワクチン開発、承認に消極的になることを誰が批判できようか。しかも、今回のワクチンは今までに例のないmRNAワクチンであり、日本では通常の手続きによる臨床治験はされていない。コロナワクチン開始が遅れたのはワクチンの副反応をことさら強調し、そのプラス面を無視してきた一部の国民と多くのメディアであろう。

(明石市 H.H.)