コロナ禍であぶりだされた日本の医療の問題点
2020/10/23
最近胸に、17色のカラーホイールバッチを付けた方をよく見るようになりました。国連が2030年までに達成すべき目標、SDGs「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」として掲げる17の目標をシンボル化してデザインしたバッチですが、その3番目に我々医師に関係が深い「すべての人に健康と福祉を」という目標があります。はたして日本の医療、その根幹となる国民皆保険制度を今後も維持して行くことは可能でしょうか?
今回のコロナ禍において、これまで政府が行ってきた政策(医療費と医師数を先進国最低に抑制したこと、保健所を減らしたこと等)のほころびがあぶり出されたように思います。
政府(医師連盟が推薦、応援し当選された方々)は、医師会が問題にしてきた診療報酬上の矛盾点を無視し、公的病院などの病院の赤字を病院の努力不足と決めつけ、病床の再編成や統廃合(もちろんすべてが悪いわけではありません)を主導してきました。今回、新型コロナ患者を積極的に受け入れた病院は、感染症病床の整備や維持にお金がかかり、院内感染や風評被害で外来患者が減少、救急患者受け入れが困難となったりして収入の減少は著しく、民間病院では経営破綻するところが出るのではないかと心配されています。
また、「医師の働き方改革検討委員会」の提言どおり時間外労働960時間が実行されれば、救急医療の崩壊は、火を見るよりも明らかですし、4月頃のことを考えれば、新型コロナ患者の入院治療に対応することは不可能になります。
規制改革論者の菅首相は、新型コロナウイルス感染症対応で特例として認めている「電話(10月9日の田村厚生労働大臣の閣議後の記者会見では、電話での診療は認めないとの発言がありましたが)も含めて初診から受けられるオンライン診療」をデジタル化の推進や規制改革の目玉として恒久化に意欲を示しているようです。初診のオンライン診療等まともな医者の考える事ではないと思いますが、菅首相の対応を見ていると恒久化の可能性は高いのではないでしょうか。