論点をすり替えてはいけない
2010/01/04
平成22年には2年に一度の診療報酬改定が行われる。改定率についてはプラスを要求する(ほんの少しだが)厚労省とマイナスを主張する財務省の間でやり取りがあった。報道によれば、その中で財務省が主張したのはデフレが進行する中で医師のみ収入が増加するのはいかがなものか、ということであったという。主要各国の中でも際立って低い日本の医療費を増加させるべき理由は医師の取り分を増やすためではなく、この国の医療の質がお粗末だからではなかったのか。無知なのか悪意があるのかは不明だがなぜこのような程度の低い議論にもっていこうとするのだろうか。
政権交代が現実のものとなった結果、中医協においても自民党を支持した日本医師会の推薦した委員は降ろされ、病院経営に携わる委員が代わって就任した。勤務医の過酷な労働条件は広く知られるところで、その改善の必要性については世論のコンセンサスも得られているといってよい。診療報酬を開業医から勤務医へ、とも叫ばれるようになった。その是非はおくとして勤務医を代表して病院側の委員が就任するのは一見理にかなう。しかし彼らが公然と主張しているのは、診療所から病院へというフレーズで、これを機に病院経営を改善したいという欲望を隠しもしない。勤務医と経営者は机をはさんで座る関係でむしろ当然といえば当然か。このような論点のすり替えはけっして許してはならない。
先の総選挙では医師においても過半数が民主党のマニフェストを信じて票を投じたことが各種調査で示されている。政府民主党も政治主導という言葉を守りその信に答えてほしい。昨今、経済状況が厳しいのはわかるが、次回診療報酬改定で何より残念なのは改定率が0.19%にとどまったことで、他のOECD諸国との差をせめて少しでも縮めようという意欲が感じられないことである。
[2009.01.04]
加古川 H氏