5類移行後の政府対応と国民動向を嘆く
2023/10/01
「今年のお盆はどのくらいの人が帰省や旅行などで動くのでしょうか」というニュースタイトルを何度も目にした。2023年は8月11日が山の日で祝日となっており、ここから連休にしている人も多かったのではないでしょうか。新型コロナウィルス感染症の法律上の位置づけが5類になって初めての夏、コロナ禍で減っていた人の動きが活発になったのは、マスコミに報道されるだけでなく、我々も夏の休暇をとるにあたって新幹線や航空機といった交通機関や宿の予約をとる折にその過密状況が予想できたと思う。報道によると、「新型コロナウィルス感染拡大も徐々に落ち着いており、普通の生活が戻ってきていることを実感する昨今、航空会社からはお盆期間中の予約状況は国内線予約数でコロナ禍前の水準まで回復、あるいは某社はそれを超えている。」とあり、高速道路の渋滞情報もその長さに驚かされた。なお、台風6号と7号は国民の移動予定を変更させたかもしれない。
観光庁による訪日外国人旅行者数・出国日本人数の推移をみると、7,8年徐々に増加し2019年5196万人(内外国人3188万人、日本人2008万人)に達していたが、コロナ禍で2020年729万人(内外国人412万人、日本人317万人)、2021年76万人(内外国人25万人、日本人51万人)、2022年660万人(内外国人383万人、日本人277万人)となっていたが今年は一段と増加している。その一因として米利上げに対し日本は慎重で円安による海外観光客にとって日本が魅力的であることが報じられ、経済的には観光業界は笑顔に絶えないであろうし、政府は経済振興策の成功を国民にアピールしたいのであろう。しかし、我々医療業界にとっては8月にはいっても沖縄九州地域を中心に依然として新型コロナウィルス感染症に加えインフルエンザ患者が多く、そして我々の兵庫県においても日々の診療で新型コロナウィルス感染症患者が徐々に増加していることが感じられ、喜んでいるどころではない。政府は患者動向を新型コロナウィルス感染症対策分科会に聞きつつ新型コロナウィルス感染症の5類移行を決定したとしている。またマスク着用ルールにおいても3月13日以降は個人の主体的な選択を尊重し、個人の判断が基本となった。本人の意思を尊重するのは良いが、その判断するための知識については日々の診療の中で不安を感じるのは私だけであろうか?いつどこで罹患したかその可能性すら考えて行動していない新型コロナウィルス感染者となった患者、例えば100人も集まるカラオケの発表会にマスクなしで参加した患者など、感染患者に聞くと感染症に無頓着としか考えられないことが多く非常に嘆かわしい。厚生労働省のホームページからは基本的感染対策について、政府としては一律に対応を求めることはなく、個人・事業者の判断を基本として感染対策を実施し、感染対策上の必要性に加え、経済的・社会的合理性や持続可能性の観点も考慮して感染対策に取り組むとあるが、日本においては国民それぞれの知識は欠乏している場合も多々存在しており、その場合政府主導で指示する体制が必要と考える。経済を優先し保健所に仕事させない政策ではなく、政府には感染症を甘く見ず、国民の健康を優先し、十分な知識の普及と到達度も考えた舵取りを期待したい。
川西市 Y.O.