ストレスチェック制度
2015/11/09
平成26年6月25日に公布された労働安全衛生法の一部を改正する法律により、ストレスチェックと面接指導の実施等を義務づける制度が創設された。いわゆるストレスチェック制度だ。マイナンバー法や安保法の陰に隠れて国民への周知は遅れているが、平成27年12月1日施行とあと1ヶ月に迫っている。
この制度は従業員数50人以上の事業場において義務化されるもので、労働者が潜在的ストレスの状況に自ら気付き、メンタルヘルス不調を未然に防ぐ一次予防の取り組みだ。ストレスチェックの実施・申し出者の医師による面接指導・適切な事後措置の3点セットで完結する。ストレスチェックの検査項目は、仕事のストレス要因(心理的負担)と心身のストレス要因(自覚症状)それに周囲のサポート(支援)の3領域で構成される。本人への結果通知と集団ごとの集計・分析により職場におけるストレス要因の評価も行う。個人のメンタルヘルス不調のリスクを低減させるとともに、職場環境の改善につなげることで、ストレスの要因そのものを低減させることが期待される。
しかし、急ごしらえのこの制度には課題が山積みだ。
多くの社員が関わる中で個人情報は守られるのか、労働者は本当のことを答えてくれるのか、医師面接を申し出たとたんに自分が高ストレス者であることが表面化するが申し出者はいるのか、会社として有効な事後措置がとれるのかなど枚挙に暇がない。さらには、医師面接を申し出られない高ストレス者はどうなるのか、安易な取り入れで労使トラブルの火種にはならないかといった懸念の声も聞く。
この法律の背景には、日本の経済力を高めることを目的とした政府の考えがあるという。「企業の損失」はすでに計算されていて、疾病休業による労働力損失465億円、自殺による労働力損失7030億円、休業以外の生産性低下4兆3364億円。ストレスチェック制度が有効に機能すれば、労働者の健康向上や生産性向上が見込まれる。
ことの発端はともあれ、現代社会には必要な制度だ。職場環境の改善を願って回答した労働者に事業者がどう答えを出すのか、これがこの制度の鍵となる。産業医においては労働者の健康管理の観点から当該事業者への十分な協力が望まれる。