「受動喫煙の防止対策を強化・実現するための署名―たばこのない東京オリンピック・パラリンピックを目指して―」活動と医師連盟
2017/06/28
平成29年5月、「受動喫煙の防止対策を強化・実現するための署名」活動を日本医師会横倉義武会長の趣意書をもとに、われわれ医師会員の医療機関で6月を中心に実施された。厚生労働省「喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書(2016年度)」では、たばこと疾患の因果関係について科学的根拠によりレベル1~レベル4まで4段階で評価され、因果関係を推定するのに十分なレベル1と因果関係を示唆しているレベル2には喫煙による健康影響と受動喫煙による健康影響が多数の疾患について判定されている。世界保健機構(WHO)の調査によると公衆の集まる場所すべてに屋内全面禁煙義務の法律のある国は49か国あり、わが国の受動喫煙による健康被害への対策は「世界最低レベル」に分類され、少なくとも年間1万5千人が受動喫煙を受けなければ、がん等で死亡せずに済んだと推計されている。また2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会の開催にあたり、国際オリンピック委員会(IOC)から「たばこのないオリンピック」の実現が求められている。このような状況の下で、わが国は世界に向け、たばこ対策に抜本的に取り組む姿勢を示す必要がある。
2015年6月労働安全衛生法改正にともない職場の受動喫煙防止対策は事業者の努力義務とされたが、もはや屋内における喫煙は単なるマナーや嗜好の問題ではなく、国民の健康被害の問題として捉え、非喫煙者とくに未成年の人を受動喫煙による健康被害から守るために、日本全体で屋内100%全面禁煙とする国際水準の受動喫煙防止法の制定が不可欠である。医師会が、「国民の健康を守る専門家集団」として国民の健康を第一に考え、例外規定や特例を設けることなく受動喫煙の防止対策を強化・実現するための署名活動を行うに至ったことは自然な流れと考えられる。
厚生労働省の健康増進法改正案に反対する団体の署名活動も実施されており、たばこ関連企業や飲食業の団体が名を連ね4月25日の発表で賛成3万6434人分に対し116万7168人分の署名を集め、喫煙・分煙・禁煙の環境を自由に選べる仕組み作りを求めている。こうなると国会や議員の考え方は健康を論じるのではなく、票集めのできる政治力に動かされる世界へと移る。われわれ医師連盟としてはこの署名活動でわれわれの力を見せる良い機会として捉えなければならない。