社会保障制度改革に暗雲 衆院解散について
2005/08/24
すでにご承知のとおり、郵政民営化法案の参院での否決を受けて、衆院が解散となりました。「再度、国民にその是非を問う。」、首相の決断です。解散ともなれば政界が混乱を来たすことは自明の理であると予想はしておりましたが、まさか「刺客」という言葉が乱れ飛ぶほど、憲政史上嘗てない醜悪な状況にまで陥るとは思いも致しませんでした。毎日のように新聞、テレビ等マスメディアが、少々過熱気味だとも思いますが、この波乱に満ちた政治の局面を実に劇場的に取り上げています。
時の政府が、ひとつの改革法案の成立に向けて、議員解散に打って出てまで国民一人一人にその是非を問うという、このような手法についていろいろと各分野から批判も続出しています。しかし、果たしてそうなのでしょうか。私は、一方的に批判を受けるべきものでもないように思います。考えても見てください。勝手なもので、過去に「国民不在」という、この言葉がどれほど数多く政争の具として用いられてきたことでしょうか。
国民不在の政治が悪しきことであるならば、国民一人一人に直接的に真を問いたいというこの度の行動は何ら責めを負うべきものではないとは考えられないでしょうか。むしろ、この度の解散に対して、国民が否が応でも政治との距離をより一層身近なものとして捉え、興味・関心を抱き(世論調査で既に現れていますが)、結果として各党の政策を知り得ようと努める、このような状況は政治に無関心と言われ続けた国民にとっては有益な事ではないでしょうか。国の在り方としても好ましい姿とは言えないでしょうか。とりわけ、今以上に多くの若い人たちが政治に関心を持ち、結果として、我が国の将来を背負う彼ら若い人たちが、この国の在り方をひとつの改革法案を通して真剣に考える機会が得られたと考えれば、大変望ましいことでもある筈です。言うまでもなく、我が国の政治が議員内閣制に基づいており、選挙で付託された議員が民意を反映しているという議会制民主主義に立脚していることを理解しているものの、それでも敢えて、私見として述べています。
しかしながら、政治の空白化がもたらす多大な弊害も憂慮しないわけには参りません。内政・外交において我が国には難題が山積致しております。私たちの関係で言えば、何よりも社会保障制度改革です。少子高齢化の急速な進展により、給付の伸びが著しい社会保障の向後の在り方が喫緊の重要課題であり、世論調査を見ても、国民の関心の高いことが伺えます。この度の解散総選挙で、社会保障審議会の各部会なども日程的に影響を受けていることでしょうし、選挙の結果によっては仕切り直しという事態も生じかねません。
日程どおりということで、重要な法案が十分な審議も行われないまま、拙速かつ強引に国会に提出され採決へという状況にならないかと危惧いたしております。
(相生市 U氏)
[ 2005.08.24 ]