医療費抑制と高齢者医療費および終末期医療費

2019/10/18

 政府による医療費抑制政策が進められる中で、後期高齢者医療制度の抜本改革の必要性も高まっています。日本の医療制度を維持していくためには、保険料負担能力の確保が最も重要であり、医療費の抑制、世代間の公平性、制度運営の効率化が改革にあたって考慮される要素です。後期高齢者制度の見直しに加えて、受診行動の適正化、給付内容の再検討、過剰投資の抑制といった体質改善も求められます。
 高齢者数、高齢者の割合・比率が増加すれば、高齢者医療費は増大し、負担金は増加します。しかし、実際には医療費全体の増加は高齢化ではなく医療技術の高度化であると言われています。
 また、終末期医療が医療費増加の原因になっているという根強い意見があります。しかし、日医総研によると、入院期間別の死亡前30日以内の1人当たり入院医療費は高額ではないというデータがあります。1日当たりの入院医療費が、入院直後に高いのは当然ですが、入院後1か月以内に亡くなる場合は、入院日数は数日にすぎず、医療費総額はたいして高くありません。そして、延命できた場合はその後手厚い医療をする必要はなく、入院費は落ち着きます。
 また、総医療費レベルでみた死亡前医療費は、医療経済研究機構によると全年齢で死亡前1か月の医療費は医療費総額のわずか3.4%にすぎません。死亡直前の医療費抑制が医療費全体に与える影響はさほど大きくなく、終末期医療が医療費の増加にはなっていません。
 人生の最終段階における医療に関しては、今後厚生労働省のガイドラインやACP(アドバンス ケア プラニング)を中心に本人、家族、医師及び多職種連携で進めて行くことが望まれます。

(尼崎市 MH)