安かろう、悪かろうでいいの?
2020/07/01
新型コロナウィルス感染症が大きな社会問題となった本年、高血圧症や糖尿病患者、高齢者など感染リスクが高いとされる人が医療機関に来院せず、医師と電話や情報通信機器を用いて連絡をとり薬の入手ができるようになりました。しかし、これはあくまでも緊急避難的な措置です。患者・医師が対面せず情報通信機器を介して治療計画を立て、薬を処方する行為を遠隔診療といいますが、本来は離島や僻地の患者や在宅療養中の患者らの対面診療を補完し、便宜を図るために考案された手段なのです。
財界を主体とする規制改革論者らが、この機会に遠隔診療のさらなる一般化を求める動きがあります。筆者には、彼らが情報通信機器だけでなくいろいろなサービス販売に参入し収益を目指しているだけでは済まないような気がします。なぜなら、診療報酬点数に目を向ければ電話や情報通信機器を用いた診療においては対面診療なら初診料288点、特定疾患療養管理料225点(複数回受診すれば月2回まで算定可)なのに、それぞれ214点、147点(複数回通信しても月1回に限る)と低く設定されているからです。しかも対面診療のように診断精度を高めるための検査はできないので、医療機関が受け取る診療報酬は限られてしまいます。すなわち国家的に公的医療費の抑制を目指す動きと受け取れるのではないでしょうか。
診療の正確性・安全性を求める限り、外来受診・在宅医療を問わず対面診療が本来あるべき姿です。公的医療給付を決して「安かろう、悪かろう」で済ませてはならないことを国民の皆様には是非ご理解いただきたいと思います。
(尼崎市 K・S)