派閥政治と民主主義
2021/10/01
この原稿を書いている9月17日は自民党総裁選の告示日で、4人が立候補を届け出た。今回の総裁選をめぐっては、当選回数の少ない若手議員グループが、派閥の意向に縛られず自主投票を求める提言をおこなった。このニュースを聞いたとき、「おっ、いいぞ!自民党の議員の中にもなかなか骨のあるやつがいるじゃないか!!」と私は思った。
以前この場で「世襲政治に終止符を」と訴えた私だが、私は決して左翼でもなければ右翼でもなく、どちらかといえば保守的な人間である。昔から私のことをご存じの方ならよくわかっていただいていると思うが、学生時代から全くノンポリ(この言葉も今や死語だ)で通してきており、原稿依頼が回ってくるたびにこのような原稿を書いている自分のすがたに毎回違和感を感じている次第である。
しかしながら、そんなノンポリの私でも「議員も官僚も長老の顔色を窺って行動しているような、現在のままの与党政権では日本の未来は暗い。」と国の将来を憂っていたところへの、若手議員の反乱とも思えるこの提言に少なからぬ共感をおぼえた。ましてこの提言をまとめたのが、福田赳夫元首相を祖父に持ち、福田康夫元首相を父に持つ、福田達夫衆院議員だというのだから、「二世、三世の世襲議員のなかにも『今のままの自民党ではだめだ』と思っておられる議員さんがいらっしゃる」ということを改めて認識した。頑張っていただきたい。
そもそも派閥だの、もっと広い範囲では政党だの、といった集団に所属していたら、その集団の方針に皆が従わなければならないというのが、正しい民主主義のあり方なのだろうか?考え方は人それぞれで、それこそ多様性に富んでいるのだから、派閥あるいは党の上層部が考えていることと、個々人の考えが常に一致するとはとても思えない。それを無理に派閥の利益だとか党利党略に合わせようとするから、世間一般の人々の意向と、政権の意向が全くずれてしまうということが、しばしば起こっているのではないだろうか?
マスコミによると、今回の若手の提言は間近に迫る衆院選の「選挙の顔」を意識しての提言だそうだが、衆院選後もこの姿勢を崩さず、各議員が派閥や党利党略に縛られることなく、自身の信念に従って行動していただくよう期待するものである。