Go To トラベ(ブ)ル
2021/01/13
政府は令和2年12月14日、新型コロナウイルス感染症対策本部の会合で、Go Toトラベルを12月28日から今年1月11日まで、全国一斉に停⽌することを決めた。人の移動に伴うコロナ感染者の急激な拡大を阻止するためだ。医療業界では予てよりGo Toトラベルには否定的意見が多く、感染が拡大している現況では即刻中止するべきと言う意見が多数であった。その一方で、年末年始の需要期に期待をかけていた観光業界、経済団体は、停止措置により阿鼻叫喚の様相である。Go Toトラベルをはじめとしたコロナ対策事業は、景気浮揚のアクセルと、感染防止のブレーキの微妙な調整と適切な判断が不可欠である。厳格な感染症対策を施行して経済活動が停止し、感染者が減少しても、失業者や自殺者が増加するようでは本末転倒である。
Go Toトラベルを直接管轄するのは国交省だが新型コロナウイルス感染症対策本部が指揮を執る。その対策本部は、総理大臣が本部長、官房長官・厚生労働大臣・新型インフルエンザ等対策特別措置法担当大臣が副本部長、それ以外の全ての大臣が本部員を務め、内閣閣議にて令和2年1月30日に設置された。過去にはアベノマスクの配布事業などがある。その議事概要にはGo Toトラベルの感染リスクについて、対策本部のメンバーで感染拡大防止のブレーキの役割を果たすべき田村憲久厚労大臣や尾身茂コロナ感染症対策分科会(新型コロナウイルス対策本部に置かれた諮問機関)会長の発言はほとんどない。一方、「Go Toトラベル事業が感染拡大の主要な要因であるとのエビデンスは現在のところ存在しない」など、アクセル側の赤羽一嘉・国交省大臣の発言が目立つ。Go Toトラベルを続けたい政府にとって都合の悪い情報は隠蔽し、対策本部は「結論ありき」の会議を繰り返している。国民の医療を守るべき厚労省と、経済を活性化する役割を担っている経産省や国交省が正確なデータを基に議論すべきだが、省庁間の政策調整の役割を果たすべき対策本部はGo Toトラベルに関しては機能せず、ご都合主義の議論に終始したことになる。
最終的にはメディアが尾身茂会長の「今の感染状況のときは中⽌した方がいいと再三申し上げている」などの専門家の批判を広く報じるようになり、内閣支持率が急落したため、Go Toトラベルは全国一斉停止となった。内閣支持率低下によって方針転換を余儀なくされた菅政権は政治的に致命的である。Go Toトラベルは菅政権にとっては厚労省、経産省、国交省のそれぞれの利権、さらには二階幹事長のご意向など正にトラブルの元凶であったと思われる。筆者は敢えてGo Toトラブルと申し上げたい。今後、秋の衆議院選挙に向けて内閣支持率が上昇するためには新型コロナウイルス感染症が収束し、オリンピックが無事開催されるしかないのだが。現在、誰にも予測できない。