S運輸健保の解散を憂う

2008/08/28

5万7千人が加入するS運輸健保が解散し、政管健保に移行した。前年度は老人保険拠出金が36億円であったが、今年度は前期高齢者納付金と後期高齢者支援金の支出総額が58億円に上り、保険料率が8.1%から10%以上に上昇し、政管健保の保険料率8.2%を上回る見通しとなったのがその理由という。大規模な健保組合が倒産以外で解散するのは、極めて異例であるが、厚労省はあろうことか解散許可を出したという。

後期高齢者医療制度は一部で「姥捨て山制度」といわれている。「姥捨て山」であれば現役世代の高齢者負担分は減るはずであるが、実は逆に増加しており、健保組合平均で、前年度は老人保険拠出金が保険料に占める割合は41%であったのに対し、制度変更後は前期高齢者納付金と後期高齢者支援金の合計は保険料の45%に達する。少なくとも現役世代が高齢者を「姥捨て山」に捨てたといわれる筋合いはないのである。

さて料率を天秤にかけて、お得な政管健保加入を選択したS運輸健保の振る舞いはいかがなものであろうか。企業がそこで働く人と家族に果たす責任を放棄したといわれても仕方がない。また易々と解散を認めた厚労省の罪も大きい。社会保障費を削減するため、政管健保の国庫負担を750億円分、健保組合に肩代わりさせたが、その負い目があるのだろうか、健保組合から政管健保への移行も認めることが条件になっていたのだろうか、などと勘ぐりたくなる。今後同じような行動に出る健保組合が増えるかもしれない。厚労省は理念を持って医療保険行政をしっかり行って欲しい。

(神戸市 Y氏)
[2008/8/28]